投資徹底攻略

流動性リスク

流動性リスク

「“Cash is King, Cash Flow is Queen.”(その3)バーゼルIIIにおける流動性リスクモニタリング」

今年の7月に、いわゆるバーゼルIII(銀行に対する次期監督規制)の流動性規制-正式には「流動性リスク計測、基準、モニタリングのための国際的枠組み」の修正案が公表されました。(http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/bis0912a.htm
およびhttp://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/bis1007a.htmご参照)まさしく、銀行に対して改めて”Cash is King, Cash flow is queen”を迫るこの内容について少しお話をしてみたいと思います。資金繰りリスクのマネジメントを考える視座の一つとして、銀行以外の業態においても参考にしていただける部分もあろうかと思います。

・流動性カバレッジ比率(LCR)

(流動性リスク 流動性リスク 1)現金、中央銀行への預け金、国債・高格付けの債券など換金容易な資産
(かつての第一線・第二線の支払準備に相当)
(2)預金などを属性に応じて分類し、資金の流出見込み額を掛け目で見積
加えて自行格付低下時の追加担保需要額や、コミットメントライン未使用枠(貸出実行義務)などを加味して算出
(3)健全資産で1カ月以内に償還を迎える(つまり現金化する)金額

・流安全調達比率(NSFR)

(4)資本、残存期間1年以上の負債、安定して滞留の見込める預金(掛け目で算出、預金保険対象の預金や個人預金などは有利)
(5)換金性の低い(資金が固定化される度合いが高い)資産ほど高い掛け目を適用して中期的な所要調達額を算出

(a) 流動性の高い資産へのシフト (b) 調達の長期化 (c) 長期滞留が見込まれ規制上の掛け目の有利なリテイル預金等の積み上げ

流動性の高い資産へのシフトを収益性を考慮して行えば、高格付で長期の債券への投資積み増し(例えば長期国債の買い増し)で対応するのが定石になります。こうした長期の債券を安心して買い増すには、必要な時にはこれを担保として活用したり、一時的に資金を調達できる「レポ取引」を機動的に行ったりできるかどうかが鍵になってきます。これは債券市場そのものの利便性向上に直結する重要なポイントになります。価格変動リスクの高い有価証券ですので、一時的な資金過不足に対応するのであれば売却ではなく一時的な担保差し入れによる調達がベターであるのは言うまでもありません。
同時に、銀行のALM部門においては、より直接的かつ戦略的に有価証券投資のオペレーションができることが必要となります。このためには、有価証券投資部門自体のALM部門としての役割再設定、フロントとしてのミッション設定がポイントとなります。流動性対策の一環として調達の長期化が図られれば、調達金利の上昇(資金利ザヤの圧縮)により、結果としてはますます運用サイドの利回りアップも求められます。このためにも、ミドル(リスク管理)機能の強化と、より高度化するオペレーションを支えるフロント・バック機能の充実も改めて課題になりますこの延長線上で、STP(Straight Through Processing)化の推進も、改めて求められることになるでしょう。

長期滞留の見込まれる個人預金の積み上げの議論は、個人取引のマーケティングの視点、IFRS等でも検討されている負債評価の取り扱い、現行のバーゼルⅡにおけるコア預金モデルなども合わせて考える必要があります。自行の預金の特性のプロファイリング、これに基づく営業戦略の立案、平均残存期間の計測(コア預金モデル)は、ALMの土台の問題として改めて詰めてゆくことが重要になってきます。
また、こうしたことを前提に、負債の時価評価は今後のIFRSの帰趨いかんではホットイシューになるかもしれません。仮に、自行格付(信用スプレッド)を負債評価に反映させることを考えた場合、リテイル預金の割合の高い邦銀は自行の格付け低下時に巨額の評価益を計上できる可能性が指摘されています。(欧米の銀行では多数この事例があります)預金と有価証券投資における公正価値ヘッジ適用の可能性、FASB(米国財務会計基準審議会)における金融負債の公正価値評価の議論、隔たりが大きく歩み寄りが注目されるIFRS vs. FASBの動向など、引き続き注目が必要なところです。

バーゼルⅢ流動性リスク管理強化――金融機関に今必要な態勢強化策とは

バーゼル銀行監督委員会(BCBS)は、2010年12月に銀行セクターの強靭性を高めることを目的として、資本・流動性規制を強化するための改革を打ち出しました。バーゼルⅢでは流動性管理の枠組みのさらなる強化として、銀行が流動性リスクに対する短期的・長期的な強靭性を高め、将来の流動性リスクを削減するという目的を達成するために、資金流動性に係る2つの最低基準が策定されました。流動性カバレッジ比率(Liquidity Coverage Ratio:LCR)と安定調達比率(Net Stable Funding Ratio:NSFR)です。

武田 光司
(EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 FSRM シニアマネージャー)

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市場リスク・流動性リスクの評価手法と態勢構築

市場リスク・流動性リスクの評価手法と態勢構築

森本 祐司 キャピタスコンサルティング株式会社代表取締役 東京大学理学部卒業。東京海上火災保険、モルガン・スタンレー証券等を経て、2007年1月キャピタスコンサルティング株式会社を共同設立、代表取締役就任。主著に、『《KINZAIバリュー叢書》ゼロからわかる金融リスク管理』『【全体最適】の保険ALM』(以上、金融財政事情研究会)など多数。 栗谷 修輔 キャピタスコンサルティング株式会社プリンシパル 早稲田大学理工学部卒業。日本長期信用銀行、興銀証券を経て、2000年データ・フォアビジョン株式会社。2011年12月キャピタスコンサルティング株式会社に参加。主著に、『【全体最適】の銀行ALM』『金融リスクマネジメントバイブル』(以上、金融財政事情研究会。共著)など多数。 久田 祥史 アール・ビー・エス証券会社ヴァイス・プレジデント 東京大学大学院工学系研究科修了(機械工学博士)。日本銀行で、リスク管理や金融工学関連の研究、外貨資産運用等に従事。ABNアムロ証券等を経て、2012年6月キャピタスコンサルティング株式会社に参加。2014年7月アール・ビー・エス証券会社入社。

書籍紹介及び目次抜粋

世界的な規制強化、今後の金利上昇をにらみ、7年ぶりに改題・改訂! ◆市場・流動性リスク管理の実情と変遷を概観し、両リスク管理の基本的手法を初心者にもわかりやすく解説。 ◆リスクの計測・把握手法から、リスク管理の発展的手法までプロセスごとに詳述。リスク管理担当部門の役職員必読。 ◆ALM運営も視野に、「自ら考えるリスク管理」を指向する経営層に今後の指針を提示。 ◆バーゼル規制や主要国の規制動向も網羅。低金利局面の長期化で形骸化した市場・流動性リスク管理の再構築に不可欠! ●主要目次● 第1章 市場リスク管理の変遷と現状 第1節 市場リスク管理の起源と歴史 第2節 制度・規制の変遷と現状 第3節 リスク管理態勢の現状 第4節 リスク管理からリスクマネジメントへ 第2章 市場リスク評価の基本的手法 第1節 市場リスクの定義と認識 第2節 市場リスクの評価・計測 第3章 市場リスク評価の発展的手法 第1節 デリバティブ関連 第2節 マクロ・ストレステスト 第3節 予兆管理 第4章 市場リスク管理の運営態勢 第1節 市場リスクのPDCAサイクル 第2節 市場リスク報告レポート 第3節 市場リスク管理態勢の検証 第5章 市場リスク管理とALM運営 第1節 市場リスク管理とALM運営の関係 第2節 損益・リスクシミュレーション 第6章 流動性リスク管理の変遷と現状 第1節 流動性リスク管理を取り巻く環境 第2節 経営戦略上の流動性リスク管理の目的 第3節 流動性リスクの特徴 第4節 流動性リスク管理の骨格 第5節 流動性リスク管理の組織 第6節 情報システムの構築・整備 第7節 今後の流動性リスク管理の方向性 第7章 流動性リスクの把握・計測 第1節 流動性リスク要因の構造分解と定義 第2節 流動性リスクの基本的評価手法 第3節 シナリオ分析とストレステスト 流動性リスク 流動性リスク 第4節 流動性規制との関係 第8章 流動性リスクの管理・運営 第1節 流動性リスク限度額の方針 第2節 流動性リスクのモニタリング・コントロール 第3節 流動性危機管理(コンティンジェンシー・プラン)

流動性リスクの正しい理解

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● 保有期間に間接的にご負担いただく費用…信託報酬 上限2.068%(税抜1.880%)です。

不動産投資の流動性リスクの概要とリスクを小さくする方法

まず、物件を購入する前に、必ず自分の目で確認してください。
理由としては、入居者が決まりやすそうか、いざというときに売却しやすそうかは、自分の目で確認しないとわからないからです。
入居者が決まりやすそうであれば空室リスクが低いと考えられますし、空室リスクが低いということは賃料収入が安定しており、流動性リスクも低いと判断できます。
リスクを把握するためにも内部や外観はもとより、周辺環境や管理状況までしっかりと確かめることをおすすめします。

都心のワンルームマンションにする

もしあなたが、これから不動産投資を始めるなら都心のワンルームマンションがおすすめです。
ワンルームマンションへの投資は、アパートやマンション一棟に投資するよりも、比較的少額で始められ、入居需要が高い都心の人気エリアに収益物件を持てるため、空室になりづらく流動性リスクを抑えることができます。
また、万が一不動産を手放すことになったとしても、東京一極集中による都心の単独世帯の増加などを背景に高い需要が見込まれるため、購入希望者が見つかりやすくなります。
つまり、購入希望者が見つかりやすい物件は流動性リスクの低い物件です。
流動性リスクを抑えたい場合は、都心のワンルームマンションを選んでください。

5.不動産投資でやってはいけないこと

利回りだけを見て決めない

利回りだけを見て物件の購入を決めるのは厳禁です。
一見利回りが高い物件は、投資家にとっては非常に魅力的に見えます。
想定通りの利回りで運用ができれば投下した資金を早く回収でき、それ以降の収入は純粋な利益になるでしょう。
しかし、高額な修繕費が必要だったり空室リスクが高かったりなど、何らかのリスクをはらんでいる可能性も高いのです。

いきなりファミリー向けや一棟買いをしない

いきなりファミリー向け物件やマンション一棟買いに手を出すのは避けた方がいいでしょう。
マンション一棟を買ってしまうと、これらを丸ごと買える資金を持っている人はそう多くないため、手放すことになったときになかなか購入希望者を見つけることができません。
また、ファミリー向けの物件であれば金額的な問題は多少クリアできますが、ワンルームマンションよりは高額になりますし、ファミリーの場合は賃貸よりも購入して住む方が多くいること、「ファミリーなら借りるより持ち家」という層がいることを考慮すると、需要という面でも疑問符が付きます。
以上のことから、既に述べた通り、不動産投資をするときには都心のワンルームマンションがおすすめです。

地方の物件に手を出さない

地方の物件も手を出さないことをおすすめします。
地方は都心と比べて不動産の賃貸需要が低くなりがちで、流動性のリスクも高くなる傾向があります。
地方と都心で同じような間取りや条件の物件があったとしたら、都心を選ぶことをおすすめします。

不動産はその特性上、流動性リスクを抱えています。
本記事の内容を参考にして、少しでも流動性リスクを小さくすることを意識しましょう。
そうすることで、不動産投資を成功させる確率を高くすることができます。

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